雲のうた、十四。 くも 『草木塔』七百一句のうち、十四句に。 見上げれば雲が急ぎ、雲のおとした雨に濡れる。空をゆくものの速さと、地上を歩く自分の遅さと。「寒い雲がいそぐ」。 あの雲がおとした雨にぬれてゐる鉢の子 まつたく雲がない笠をぬぎ鉢の子 物乞ふ家もなくなり山には雲鉢の子 寒い雲がいそぐ鉢の子 雲がいそいでよい月にする行乞途上 残された二つ三つが熟柿となる雲のゆきき雑草風景 水に雲かげもおちつかせないものがある柿の葉 雲のゆききも栄華のあとの水ひかる柿の葉 水底の雲もみちのくの空のさみだれ柿の葉 しぐれて雲のちぎれゆく支那をおもふ銃後 焼場水たまり雲をうつして寒く孤寒 死はひややかな空とほく雲のゆく孤寒 どこからともなく雲が出て来て秋の雲旅心 鳥とほくとほく雲に入るゆくへ見おくる鴉 よく使われることばの一覧へ
見上げれば雲が急ぎ、雲のおとした雨に濡れる。空をゆくものの速さと、地上を歩く自分の遅さと。「寒い雲がいそぐ」。