一位
草
『草木塔』の書名は、草木の命を供養する塔のこと。山頭火にとって草は、すわる場所であり、寝床であり、いつか帰っていく場所だった。「うれしいこともかなしいことも草しげる」。
七百一句を、ことばの数でかぞえてみました。
いちばん多いことばは「草」、五十二句——ついで水、山、月。
歩いて、乞うて、山野に寝た人の見ていたものが、そのまま順番にあらわれます。
大正十四年、熊本から。昭和十五年、松山まで——十五年の行乞流転。
その時期にとりわけ多く詠まれたことばを、章の道すじに立てました。
山頭火をつまんで動かすと、時代をたどれます。

一位
『草木塔』の書名は、草木の命を供養する塔のこと。山頭火にとって草は、すわる場所であり、寝床であり、いつか帰っていく場所だった。「うれしいこともかなしいことも草しげる」。
二位
行乞の道々で出会う湧き水、汲む水、もらってもどる水。酒に身を持ちくずした人がいちばん多く詠んだ飲みものは、じつは水だった。「へうへうとして水を味ふ」。
三位
巻頭句「分け入つても分け入つても青い山」の山。富士でも阿蘇でもなく、ただ「青い山」——どこの山でもないから、読む人それぞれの山になる。
| ことば | 回数 | ことばのおぼえがき | |
|---|---|---|---|
| 4 | 月つき | 34回 · 34句 | 庵にひとり住むようになってから、月はいちばん親しい訪問者になった。戸締まりをしない暮らしだから、月は寝床まで入ってくる。「寝床まで月を入れ寝るとする」。 |
| 5 | 咲くさく | 30回 · 30句 | 名のない草が咲くことに、この人は何度でも足をとめた。咲くものはみな、そのままで肯定される。「それもよからう草が咲いてゐる」。 |
| 6 | 雪ゆき | 30回 · 24句 | 山頭火の句でいちばん静かな言葉かもしれない。其中庵にひとり、降り積もるものをじっと見ている。「雪へ雪ふるしづけさにをる」。 |
| 7 | 風かぜ | 24回 · 24句 | 風は吹かれるものではなく、そのなかを歩くものだった。「けふもいちにち風をあるいてきた」。風はときに涼しく、ときに「おのれを責めつつ歩く」道づれになる。 |
| 8 | 花はな | 23回 · 23句 | 花ざかりよりも、ひっそり咲く花に目がいく人だった。茶の花、枇杷の花、ぺんぺん草の花。「やつと咲いて白い花だつた」。 |
| 9 | ふる | 21回 · 20句 | 雨が降り、雪が降り、木の葉が降る。笠ひとつで降るものの下を歩きつづけた人だから、この言葉は空から句へまっすぐ落ちてくる。「雪ふる食べるものはあつて雪ふる」。 |
| 10 | 葉は | 20回 · 19句 | 柿の葉、枇杷の葉、芋の葉。一枚の葉が落ちる、それだけのことが一句になる。「日ざかり落ちる葉のいちまい」。 |
| 11 | 旅たび | 20回 · 17句 | 山頭火の生涯そのもの。家を持たず、旅から旅へ草鞋を穿きかえながら句は生まれた。「この旅、果もない旅のつくつくぼうし」。 |
| 12 | 落葉おちば | 19回 · 18句 | 落葉は掃くもの、踏むもの、そして人の訪れを知らせるもの。庵のひとり暮らしでは、落葉の音が耳のそばにある。「落葉ふみくるその足音は知つてゐる」。 |
| 13 | あるく | 17回 · 17句 | 山頭火は歩く俳人だった。「どうしようもないわたしが歩いてゐる」。行き先はなくて、歩くことのほうが目的だった。だから句も、歩数のように増えていく。 |
| 14 | 食べるたべる | 16回 · 15句 | いただいた米を炊き、蕗を摘んで食べる。食べることの句は、そのまま生きていることの記録である。「しみじみ食べる飯ばかりの飯である」。 |
| 15 | ふるさと | 16回 · 15句 | 生家の没落と母の死があった山口の町。なつかしさと痛みがいつも同居している。「ふるさとは遠くして木の芽」。 |
| 16 | 水音みずおと | 15回 · 15句 | 水の音だけで一句が立つ。「分け入れば水音」。山を歩く人にとって水音は道しるべであり、庵では心を静めてくれるものだった。「水音しんじつおちつきました」。 |
| 17 | 雲くも | 15回 · 14句 | 見上げれば雲が急ぎ、雲のおとした雨に濡れる。空をゆくものの速さと、地上を歩く自分の遅さと。「寒い雲がいそぐ」。 |
| 18 | おちる | 14回 · 12句 | 熟柿がおちる、椿がおちる、葉がおちる。おちるものを待つ時間が、庵のいちにちだった。「澄太おもへば柿の葉のおちるおちる」。 |
| 19 | ちる | 13回 · 13句 | 咲くことと同じだけ、散ることを詠んだ。散るのは花や葉であり、いつかの自分でもある。「ひつそり咲いて散ります」。 |
| 20 | 啼くなく | 12回 · 12句 | 虫は「鳴く」、鳥はしばしば「啼く」と書き分けた。「啼く」と書かれるとき、その鳥はどこか山頭火自身である。「鴉啼いてわたしも一人」。 |
全七百一句を機械で数え、ひとの目でたしかめました。
「ゐる」「する」のような、どの句にもあることばは除いています。五句以上のことばを載せています。
山頭火アラームは、この七百一句をポケットに入れて
毎朝一句で目覚めるiOSアプリです。