咲くうた、三十。
さく
『草木塔』七百一句のうち、三十句に。
- ひさしぶりに掃く垣根の花が咲いてゐる鉢の子
- 歩きつづける彼岸花咲きつづける鉢の子
- また逢へた山茶花も咲いてゐる鉢の子
- 今日の道のたんぽぽ咲いた鉢の子
- 何が何やらみんな咲いてゐる行乞途上
- 散るは柿の葉咲くは茶の花ざかり山行水行
- 蜂がてふちよが草がなんぼでも咲いて山行水行
- ほんにしづかな草の生えては咲く山行水行
- 生えて伸びて咲いてゐる幸福山行水行
- いつでも死ねる草が咲いたり実つたり山行水行
- 百合咲けばお地蔵さまにも百合の花山行水行
- いつとなくさくらが咲いて逢うてはわかれる旅から旅へ
- 山ふかく蕗のとうなら咲いてゐる旅から旅へ
- 伸びるより咲いてゐる雑草風景
- ひつそり咲いて散ります雑草風景
- 身のまはりは草だらけみんな咲いてる雑草風景
- それもよからう草が咲いてゐる雑草風景
- 米とぐところみぞそばのいつとなく咲いて柿の葉
- いつまで生きる曼珠沙華咲きだした柿の葉
- ほんのり咲いて水にうつり柿の葉
- やつと咲いて白い花だつた柿の葉
- ひつそりとして八ツ手花咲く銃後
- 身のまはりはほしいままなる草の咲く孤寒
- 草は咲くがままのてふてふ孤寒
- おのれにこもる藪椿咲いては落ち孤寒
- げんのしようこのおのれひそかな花と咲く孤寒
- たまたまたづね来てその泰山木が咲いてゐて旅心
- 生えて墓揚の、咲いてうつくしや鴉
- 萩が咲いてなるほどそこにかまきりがをる鴉
- 身のまはりは日に日に好きな草が咲く鴉
名のない草が咲くことに、この人は何度でも足をとめた。咲くものはみな、そのままで肯定される。「それもよからう草が咲いてゐる」。