風のうた、二十四。
かぜ
『草木塔』七百一句のうち、二十四句に。
- けふもいちにち風をあるいてきた行乞途上
- 旅の法衣がかわくまで雑草の風行乞途上
- 風の枯木をひろうてはあるく山行水行
- 草にも風が出てきた豆腐も冷えただろ山行水行
- 風がすずしく吹きぬけるので蜂もとんぼも山行水行
- 柳があつて柳屋といふ涼しい風旅から旅へ
- すわれば風がある秋の雑草旅から旅へ
- さて、どちらへ行かう風がふく旅から旅へ
- 風がほどよく春めいた藪と藪雑草風景
- 何を求める風の中ゆく雑草風景
- 木かげは風がある旅人どうし雑草風景
- 死をまへに涼しい風雑草風景
- 傷が癒えゆく秋めいた風となつて吹く雑草風景
- たたずめば風わたる空のとほくとほく柿の葉
- ふつと影がかすめていつた風柿の葉
- 風の明暗をたどる柿の葉
- 風は何よりさみしいとおもふすすきの穂柿の葉
- 風の中からかあかあ鴉柿の葉
- 風の中おのれを責めつつ歩く孤寒
- われをしみじみ風が出て来て考へさせる孤寒
- 風のなか米もらひに行く鴉
- 焼いてしまへばこれだけの灰を風吹く鴉
- 風は海から吹きぬける葱坊主鴉
- まがると風が海ちかい豌豆畑鴉
風は吹かれるものではなく、そのなかを歩くものだった。「けふもいちにち風をあるいてきた」。風はときに涼しく、ときに「おのれを責めつつ歩く」道づれになる。