旅のうた、十七。
たび
『草木塔』七百一句のうち、十七句に。
- この旅、果もない旅のつくつくぼうし鉢の子
- 旅のかきおき書きかへておく鉢の子
- いつまで旅することの爪をきる鉢の子
- 旅の法衣がかわくまで雑草の風行乞途上
- わがままきままな旅の雨にはぬれてゆく行乞途上
- 月も水底に旅空がある旅から旅へ
- 旅はいつしか秋めく山に霧のかかるさへ旅から旅へ
- 燕とびかふ旅から旅へ草鞋を穿く旅から旅へ
- 旅はゆふかげの電信棒のつくつくぼうし雑草風景
- 旅は笹山の笹のそよぐのも柿の葉
- あてもない旅の袂草こんなにたまり柿の葉
- また一枚ぬぎすてる旅から旅柿の葉
- 荒海へ脚投げだして旅のあとさき柿の葉
- 旅もいつしかおたまじやくしが泳いでゐる鴉
- 水音けふもひとり旅ゆく鴉
- 旅の月夜のだんだん虧げゆくを鴉
- 月のあかるさ旅のめをとのさざめごと鴉
山頭火の生涯そのもの。家を持たず、旅から旅へ草鞋を穿きかえながら句は生まれた。「この旅、果もない旅のつくつくぼうし」。