雪のうた、二十四。
ゆき
『草木塔』七百一句のうち、二十四句に。
- 生死の中の雪ふりしきる鉢の子
- 雪がふるふる雪見てをれば鉢の子
- 安か安か寒か寒か雪雪鉢の子
- 其中雪ふる一人として火を焚く其中一人
- 雪へ雪ふるしづけさにをる其中一人
- 雪ふる一人一人ゆく其中一人
- とぼしいくらしの屋根の雪とけてしたたる山行水行
- 雪へ足跡もがつちりとゆく山行水行
- しんみり雪ふる小鳥の愛情山行水行
- 遠山の雪も別れてしまつた人も山行水行
- 雪のあかるさが家いつぱいのしづけさ山行水行
- 寝ざめ雪ふる、さびしがるではないが山行水行
- 誰か来さうな雪がちらほら山行水行
- この道しかない春の雪ふる旅から旅へ
- ぶらりとさがつて雪ふる蓑虫雑草風景
- 雪もよひ雪にならない工場地帯のけむり雑草風景
- ふるさとはあの山なみの雪のかがやく柿の葉
- 春の雪ふる女はまことうつくしい柿の葉
- 何事もない枯木雪ふる柿の葉
- 雪ふる食べるものはあつて雪ふる柿の葉
- 雪ふれば酒買へば酒もあがつた柿の葉
- 雪へ雪ふる戦ひはこれからだといふ銃後
- 枯すすき枯れつくしたる雪のふりつもる孤寒
- わかれてからのまいにち雪ふる孤寒
山頭火の句でいちばん静かな言葉かもしれない。其中庵にひとり、降り積もるものをじっと見ている。「雪へ雪ふるしづけさにをる」。